3月10日(金)
【相場概況】
東証プライムの値上がり銘柄126/値下がり銘柄1673
騰落レシオ(25日) 127.62%
空売り比率 52.7%
売買代金
東証プライム 4兆1566億円
東証スタンダード 1020億円
東証グロース 1705億円
【恐怖指数】
Fear and Greed Index - Investor Sentiment | CNN
SVBショックで、一気にExtream Fearに振れました。
【業種】
【個別】
大日本印刷(7912)が、一時9%高になり、昨年来高値を更新しています。
同社は、2023年度から始まる中期経営計画の骨子を発表し、同時に取得総数4000万株・取得総額1000億円を上限とする自社株買いを実施すると発表しています。
また、自己株式の消却について、消却前の発行済み株式総数の7.88%に相当する2500万株を3/10に焼却する予定です
ただ、株価は大陰線で終わっていて、休み明け居所を探す展開になりそうです
プレミアウォーターホールディングス(2588)がマドを開けて急伸しています。
同社は好調な業績を背景に、2023年3月期の年間配当を22円→60円に大幅増配することを発表しています。
29日の権利付き最終日を前に配当取りの買いが入ったようですが、高寄りした後は急速に上昇幅縮小しています。
過度な期待は禁物かもしれません。
東邦金属(5781)が場中値つかずのストップ高比例配分になり、昨年来高値を更新しています。
同社は、新開発異種金属接続法を用いた核融合炉用高熱負荷機器開発が重要マイルストーンを通過したことを発表し好感されています。
新開発の異種金属接合技術を用いて作成したダイバータが、高温プラズマ照射環境下での試験に成功したことから、将来の核融合炉への実装が目されていて、今後、大型プラズマ実験装置における実験を計画しているようです。
同社株は時価総額46億円の超小型株であり、次世代原発と言われる核融合炉関連の材料とあって継続物色されると見る向きもあります。
来週の値動きが注目されます。
屋外電子看板等を手掛けるTBグループ(6775)がストップ高まで買われ、昨年来高値を更新しています。
同社は子会社スマートヘルスネットと旅行大手のJTBとの間でメディカルツーリズムの取り扱いに関する基本契約を締結したと発表しています。
訪日外国人向け医療ツーリズム事業の拡大を目指し、渡航全般のサポートやラグジュアリーホテルの手配、高級デパートと連携したお買い物サポートサービスなどハイグレードなサービスの提供を予定しているようです。
同社も時価総額28.6億円の超小型株であり、ボラティリティの大きい値動きが想定されます。
反面、日本郵船(9101)が大幅安になっています。
同社は2023~24年に大規模な自社株買いを実施し、配当性向も25%→30%に引き上げ、配当下限金額も100円に引き上げることを発表しています。
しかしながら、同時に発表された中期経営計画が失望を呼んで株価は下落しています。
中期経営計画最終年度の2026年度の経常利益は2700億円が見込まれており、今期の1兆800億円と比べれば大きく見劣りします。
今期は持分適用会社ONEのコンテナ船運賃高騰の特需があったことは知られていますが、来期以降は特需がかなり剥落する見通しが失望されている様子です。
商船三井(9104)、川崎汽船(9107)も弱含み、海運株は全面安になっています。
尚、商船三井は3/31に中期経営計画を発表する予定とのことで注目されるところです。
【テクニカル分析】
日経平均は大幅反落!
大幅ギャップダウンからスタートし、SQ値(28377.34円)、5日線(28351円)を割り込み、「宵の明星」を形成しています。
ナイトセッションの日経平均CFDは27766円 -378円 配当落ちが考慮される日経平均先物は27530円 -330円で戻ってきています。
私自身は、日銀サプライズを想定していて、マド埋めの27900円程度までの下落は覚悟していましたが、結局、日銀サプライズはなく、「米シリコンバレーバンク(SVB)の破綻」(後述)というブラックスワンの登場により、マーケットは急落してきています。
空売り比率が52.7%まで高騰していますので、下げ止まれば、なにがしかの反発は期待できるかもしれませんが、カギを握るのは海外投資家の動向と思います。
GPIFのリバランス売りと思われる信託銀行の売りが16週連続で出る中、先物を合算すれば、一貫して買い向かったのは海外投資家です。
全上場企業の50%がPBR1倍以下と言われている日本株を消去法的に買い進めてきた海外投資家の買いが継続するのかが今後の大きな注目点になると思います。
目先の移動平均上の下値メドとしては、25日線(27705円)、200日線(27347円)、75日線(27313)あたりが意識される流れになると思います。
【本日のトピック】
さて、今回破綻したシリコンバレーバンク(SVB)の22年末の総資産は約2090億㌦(約28兆円)で、全米で16位の規模になるようです。
全米トップのJPMの約15分の1くらいで、日本で言うと、ふくおかFG(約29兆円)クラスの銀行です。
シリコンバレーバンク(SVB)は、その名の通り、ベンチャーブームにのり、大手銀行より緩い審査でスタートアップを支援して急成長してきた銀行です。
しかしながら、新興企業の勢いが弱まる中、優良な貸し付けが伸びず、それを補うべく、上記のように有価証券投資を活発化させてきたようです。
有価証券の投資先は米国債やMBSなど、安全資産と言われる債券が主流であったようです。
しかしながら、FRBによる急激な利上げによる金利上昇がスタートしたため、債券価格が下落し、途中売却できず、満期まで持ち切る満期保有証券の保有率が増えていったようです。
SVBの資産構成比率をみると、現金は6%ほどしかなく、売却可能債券が13%、満期保有債券が43%と、かなりいびつな状況でした。
問題は、同行の取引先である新興企業の資金繰りが厳しくなり、預金の引き出しのみならずコミットメントラインの引き出しを要請されるようになったことです。
ホールセール仕様で個人預金の少ない同行は、キャッシュ不足に追い込まれ、売却可能債券の売却と増資でキャッシュを確保しようと試みました。
しかしながら、「そこまでしないとキャッシュが手当できない危ない銀行」との評判が流れ、いわゆる取り付け騒ぎが発生し、あっという間に破綻に追い込まれたという経緯のようです。
リーマンの教訓から、大手行は厳しいストレステストを課せられ、「銀行は大丈夫」と思いこんでいた市場は、完全に虚をつかれました。
S&P500銀行指数など、大手銀行も含め銀行株は急落しています。
2月雇用統計は雇用者数は予想より増加したものの賃金の伸びは鈍化という、どっちつかずの結果となりました。
しかしながら、米長期国債利回りは大幅に低下してきています。
本来なら、FDICによる破綻処理で満期保有債券売却の思惑から金利上昇がおこってもおかしくないと思うのですが・・・
恐らく、マーケットには、
「金融機関破綻」→「FRBは利上げを躊躇」→「次回FOMCの0.5%利上げは不可能」と言う思惑が働いたものと思われます。
リーマンショックのような連鎖的な金融危機を連想してしまったのだと思われます。
しかしながら、今回のSVBの破綻は、新興企業を対象にした特殊なビジネスモデルであり、米国の金融システムそのものを脅かすものではありません。
景気が悪化して、経営破綻が相次ぎ、不良債権増加となった破綻ではないからです。
イエレン財務長官も波及の懸念はないと言及しています。
恐らく、FRBの利上げ判断には影響はなく、長期金利も、元のレンジの水準に戻り落ち着きを取り戻すと思います。
ただ、株式市場は、なかなか落ち着きどころを見いだせないかもしれません。
株式市場は新興企業の資金繰りに目を光らせることにならざるを得ず、「ネクストSVB」を探す動きが活発化するかもしれません。
いまのところ、日本市場には直接関係ないと思われるものの、前述のとおり、海外投資家の手口に左右される日本株はそうとも言えません。
来週も、2月のCPIなど、重要な経済指標の発表が相次ぎます。
日本株については、引き続き、「押し目買い」のスタンスですが、まずは落ち着きどころを見極めるタイミングになると思います。