5月23日(金)
【相場概況】
【売買代金】
【米株市況】
【個別銘柄】
日本製鋼所(5631)が急反発となり、年初来高値を更新しています。
23日の日本経済新聞は、「政府は防衛装備品の輸出拡大に向け、護衛艦や戦闘機などの売り込みに注力し始めた。」と報じています。
石破首相が講演した、幕張メッセで開催されている防衛装備や兵器の見本市「DSEI Japan」では、同社が防衛装備庁(ATLA)と連携、研究開発している電磁砲「レールガン」の模型や試射に関する映像が出展されています。
また、ロイター通信は23日「トランプ米大統領は早ければ金曜日にも原子力発電を増強する命令に署名する予定だ」と報じました。
同社は、発電用の大型鍛鋼部材を扱っており、その点からも材料視されたようです。
原子力事業としては、同社の他、三菱重工業(7011)やIHI(7013)も買われています。
三菱UFJeスマート証券の山田勉マーケットアナリストは「米国だけでなく国内でも『革新軽水炉』の開発が進むなど高い技術が求められている。原子力事業は防衛力の強化と並んで息の長い投資テーマとあって、買い安心感につながりやすい」と話しています。
ジーエヌアイグループ(2160)がストップ高買い気配になっています。
同社は、23日、主要子会社であるジャイア・セラピューティクスが中国で開発を進めている「ヒドロニドン」の肝線維症治療における第3相臨床試験に関し、主要評価項目を達成したと発表しました。
良好な結果が得られたことを踏まえ、ジャイア・セラピューティクスは2025年第3四半期にNMPA(中国国家薬品監督管理局)にNDA(新薬承認申請)を提出する予定です。
同時にIND(新薬臨床試験開始)申請を提出する準備を進め、IND申請の承認を前提に、同年後半に米国において、MASH関連線維症の治療薬としての第2相臨床試験を開始する予定だとしています。
本日の株価はストップ高の一本値で差し引き753万株超の買い物を残して終えており、新薬の実用化による収益貢献を期待した買いは続きそうです。
エヌエフホールディングス(6864)が4営業日ぶりに反発しています。
石破首相が今年を「量子産業化元年」と位置付けスタートアップ支援を宣言したこともあって、関連銘柄の株価が改めて刺激され、同社株の他、フィックスターズ(3687)、HPCシステムズ(6597)などの量子コンピューター関連に位置付けられる銘柄群に投資資金の攻勢が目立つ流れになりました。
次世代コンピューティングの本命として量子コンピューターへの注目度が世界的に増しており、光量子コンピューター分野などでは日本は高い技術力を有しています。
株価は横にらみしながらの動きが想定されますが、一段高も期待できそうです。
【本日のトピック】
さて、23日、トランプ大統領が日本製鉄(5401)によるUSスチールの買収を承認したというニュースが報じられました。
まだ、日本製鉄が目指すUSスチールの完全子会社化が実現するかはわからないものの、2023年12月末の買収発表から紆余曲折あった中、日本製鉄の悲願の達成に大きく近づいたことは間違いないと思います。
しかも、先の日米首脳会談で、石破首相は「買収」を「投資」と言い換えて売りこんだため、トランプ大統領は「日本のコントロール化には置かれない」と解釈し、一時、事態は日本製鉄がパートナーになるという、同社が目指す買収とは、かけ離れた方向にすすむ可能性がでてきていました。
石破首相らは、日本製鉄にろくに説明することなく、トランプ大統領の反発を抑えたい一心で「買収」を「投資」に置き換えたとのことですから、いやはやという感じです。
それでも、日本製鉄の今井会長は、「基本的な出発点=スターティングポイントは、現在の合併契約になる(USスチールの子会社化)」とのコメントを出し、米国と粘り強い交渉をしてきました。
ろくに相談すらなく、石破首相らからディールの後始末を丸投げされたわけですが、ここまできたのは、日本製鉄経営陣の執念の賜物と思われます。
日本製鉄の悲願が達成されれば、同社の粗鋼生産量は世界第3位に躍進する見込みです。
同社は、2030年までにインドでの粗鋼生産を3,000万㌧超に引き上げる予定で、今回の買収と併せて、総額1億㌧に持っていく計画です。
現状の鉄鋼業界は、中国の輸出が急増している状況です。
昔から「鉄は国家なり」と言われますが、国防の観点からも中国の独走を許すことは好ましくありません。
中国の大量輸出は鋼材マージンを引き下げ、鉄鋼メーカーの業績を圧迫しています。
日本製鉄は、厳しい環境下においても、高品質の製鉄に注力することにより業界では高い利益率を確保しています。
どんな環境下においても、6,000億円以上の事業利益は確保できるよう体質改善も進んでいる様子です。
株価は、5/12の決算発表で減益、減配になったことを嫌気され低迷しています。
同社は配当性向30%程度を掲げていますが、首尾よくUSスチールの子会社化が成就すれば、1,500億円程度の利益上乗せが期待できますので増配もあるかもしれませんね。
(5/23現在、配当利回り4.18%)
もちろん買収による負の効果も考えられます。
・財務悪化
2兆円の買収費用による有利子負債増。 財務レバレッジ上昇、金利負担。
・追加投資の可能性
USスチールの老朽化した設備への投資。
・労働組合との折衝
シナジー効果に時間がかかると減損もあり得る。
といったことにはチェックしていく必要がありそうです。
ただ、同社株は1,989年、2,007年と18年ごとに高値をつけるサイクルがあると見る向きもあり、2025年も期待できるかもしれません。
国益の為にも、なんとか成功してほしいものです。